19世紀末のヨーロッパでは、X線、写真、蓄音機やラジオなどの新たな技術が普及し科学技術文明が開花したが、一方で交霊術やテレパシーなども関心を集めていた。また文学や哲学、心理学の分野では自我同一性や無意識が研究された。本研究では、カール・デュ・プレルに代表されるドイツ語圏の心霊主義の思想がどのように人間の魂や無意識を探究し、同時代の文学や芸術における表現へと結実したのかを明らかにする。ドッペルゲンガーと超感覚的知覚というモチーフが同時代の文化や芸術にどのような影響を与えたのかを追究することで、科学技術を基盤とする現代文明の根底になおも存在している、「魂」をめぐる思想の系譜を浮かび上がらせる。
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