研究課題
基盤研究(C)
和製海賊小説とは、戦国時代に東シナ海周辺を舞台に、倭寇こと日本の海賊および朱印船貿易に従事した商人を描く一群の小説を指す。倭寇を描いた小説は、日清戦争後の19世紀末に現れ始め、1930年代に完成し、戦後の中断を経て1950年代になって海賊商人を主軸として隆盛したと考えられる。こうした和製海賊小説が生まれた契機は、英語圏での海賊の言説である可能性が高い。例えばアウグスティヌスが紹介した海賊の逸話の移入は、帝国の先遣隊として倭寇を再評価する視点をもたらし、スティーブンソンの『宝島』やハガードの『ソロモン王の洞窟』は、異国にある「宝」の継承を正当化する物語の翻案を生み出したといえるだろう。