赤痢は法定感染症のなかでも明治期を通した合計患者数が最も多いにもかかわらず、コレラ・ペスト・結核・ハンセン病などに比して研究蓄積は少ない。本研究では、各県が作成した『赤痢病流行紀事』などを活用し、通時的かつ全国的動向を意識した大局的な研究をすすめ、近代日本の感染症史のなかに赤痢流行を位置づける。さらに、赤痢はCOVID-19流行でも話題となった経済への影響、患者をめぐる偏見・差別に係る現代的課題を考えるうえでも豊富な事例を提供してくれる。そこで、赤痢流行をめぐる問題から現代社会で参考にし得る過去の人びとの対応実態を追究する。
|