本研究は、「法と感情」研究の手法を用いつつ、「怒り」の感情と立法や司法との関わりに的を絞った検討を行うものである。「怒り」という感情は、不正義を告発する側面があるという点で正義感覚と密接に関連することから、法の感情的淵源の一つに位置づけられることがある。もちろん、全ての「怒り」が社会的不正義の告発につながるわけではなく、度を超した「怒り」が暴力を誘発し社会の安寧を乱すこともある。本研究では、不正義を告発し法の淵源となる「正しい怒り」をめぐる原理的考察を行い、不正義を被る当事者の「怒り」や道徳共同体成員の「怒り」、さらには裁判官の「怒り」が立法や司法とどのような関係にあるべきか、これを探求する。
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