研究課題
基盤研究(C)
本邦では、慢性腎臓病は約1330万人、国民の約8人に一人がり患していると推測されている。疾患の進行により、末期腎不全となり、慢性透析療法を必要としている方も多い。これまで慢性腎臓病の進展には、慢性炎症や線維化など、多くの病態が関与することが報告されてきた。我々は、糖尿病性腎臓病の進展において、腸管上皮の脆弱性を基とした、腸内細菌の体内移入が重要な役割を果たしていることを示してきた。本研究課題では、各種腎臓病モデルにおける腸管上皮の脆弱性と、腎臓病進展の機序、さらに新規治療標的の創出を試み、慢性腎臓病の克服につながる基盤を形成する。
我々は、腸内細菌叢が糖尿病性腎疾患(DKD)において重要な役割を果たすことを、モデルマウスにおいて報告してきた。DKDの進行において腸内細菌、特にKlebsiella oxytocaの体内移入が、全身の慢性炎症を誘発し、腎障害の増悪に寄与することが明らかとなった。しかしながら、ヒトDKD患者において、同様の現象が認められるか不明であった。そこで今年度は、DKD患者の循環血液中におけるKlebsiella oxytoca遺伝子の存在と腎機能との関連を検討した。腎機能障害を認めないコントロール16名、DKD患者17名、血液透析を必要とするDKD患者5名、糖尿病のない慢性腎臓病患者7名で評価した。血液中の細菌由来DNA(16S rDNAおよびK. oxytoca遺伝子)は、ドロップレットデジタルPCRを使用して検出し、その臨床的特徴との関連を調査した。DKD患者の血液中でK. oxytoca遺伝子の増加を確認した。興味深いことに、血中のK. oxytocaコピー数およびK. oxytoca/16S DNA比は、DKD患者の血清クレアチニンおよびBUNレベルの上昇と、eGFRの低下と相関した。さらに、K. oxytocaのレベルは、好中球の割合の増加、リンパ球頻度の低下、ならびに好中球対リンパ球比の増加とも関連した。これらの結果より、循環中のK. oxytoca遺伝子の存在は、DKD患者における腎機能低下を反映するバイオマーカーとして機能する可能性が示された。免疫担当細胞、特に好中球の割合と遺伝子コピー数が関連することより、病態の機序に慢性炎症が関与している可能性も考えられた。
2: おおむね順調に進展している
当初の予定通りヒトでの検討を進めることができた。
腸内細菌の代謝産物であるD-アミノ酸に着目して検討を進める。D-アミノ酸のうちD-アラニンは腎保護作用を持つことを報告したが、腸管上皮保護作用を持つD-アミノ酸X, Yを見出した。各種腎疾患モデルにおいてD-アラニンによる直接的腎保護に加え、X,Y投与下での腸管保護と腸内細菌の移入阻止による間接的な腎保護作用が認められるという仮説を立て検討する。さらにその腸管上皮細胞の保護機序を解明するため、腎細胞や腸管上皮細胞の統合的オミックス解析を行う。本課題により、腸管環境の破綻を、腎疾患の共通進展因子として提唱し、D-アミノ酸を用いた腸管と腎をターゲットとした治療法を確立することを目的とし、検討を進める。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件、 招待講演 3件)
Nephrology
巻: 29 号: 12 ページ: 909-916
10.1111/nep.14408