研究目的は、ハイデガー空間論から介護ケアの実践の意味を解明し、そこから逆照射してハイデガー空間論の新たな意義を提示することである。介護ケアを分析して行為の成り立ちにおける身体感覚と空間把握との関係と、「ここ」という自身の居場所に関する空間把握の成り立ちを明らかにする。次に、そこから逆照射して、ハイデガー空間論の新たな意義を身体論との対照で提示し、ハイデガーの空間性と時間性との相即的解釈を提案する。 行為における空間把握の成り立ちを論じるハイデガー空間論は、身体性の欠如という欠陥があるとされてきた一方で、介護ケアの実践には身体論では十全に説明できない共同行為があり、その意味の解明が求められている。
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