本研究はシルヴィア・プラスを中心とした戦後アメリカの抒情詩人の詩を手掛かりに、20世紀半ばにおける人間主体が当時の科学技術的状況の変化によりどのような自己認識の揺れを経験したか探求する。プラスとその周辺に位置する詩人の作品は、物理学や宇宙科学、遺伝科学の発達をはじめ、科学分野における発展への興味関心に駆動されている例が少なくない。20世紀半ば以降、科学技術によって既存の境界が融解し人々の自己認識も絶えず変容しているが、本研究が扱う詩人たちはこの変容の諸相を言語化することに注力している。作品が描く自己の境界の揺れに着目し、科学技術の絶え間ない発展に媒介された世界を生きる人間主体を考察する。
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