研究課題
若手研究
アメリカ文学における「不可知(the unknowable)」の表象を軸に、知の限界をめぐる想像力と社会基盤を問い直す思索との接点を考える。19世紀末の論壇で一大ブームとなった「不可知」のテーマは、従来、神学や哲学分野の高尚な用語・問題意識とみられてきた。しかし本研究では、失われた証拠、奴隷制に奪われた知識、権力をあざむく秘匿の技法、礼儀作法と認識の抜け穴など、ごく日常的な問題として不可知が語られ、検証された事例を取り上げる。いわゆる「長い19世紀」の文芸作品や大衆出版物、手記、スピーチなど幅広いジャンルを扱うことで、草の根の社会批評や広義の哲学的探究を明らかにしたい。