研究課題
若手研究
本研究は,ルクレーティウス『事物の本性につ いて』において字母と原子のアナロジーが果たす役割を,当時の文法教育の方法や体系という観点から明らかにすることを目指すものである.作中で用いられた字母と原子の類推が,類似性を手がかりに読者の理解を促進する手段となるだけでなく,当時の教養ある読者にとって馴染み深い文法教育との繋がりを生み出している可能性を考え,現実世界を極小の原子から説明する原子論と,限られた字母の無数の組み合わせで読み手に豊かな心象世界を構築して見せる詩人の技量との相関を,同時代のローマの文法理論を参照しつつ解明することを目標とする.