本研究では、水道水に含まれるフッ素が乳幼児期から成人期まで人的資本の形成過程に及ぼす長期的影響を明らかにする。1950年代にフッ素の虫歯予防効果が確認されて以来、諸外国では水道水にフッ素を添加する施策を行っている。しかし近年の研究では、高濃度フッ素が認知機能を低下させる可能性が提起され、フッ素の安全性や適切な使用量について議論が交わされている。本研究は、自然環境に由来するフッ素の外生性に着目し、フッ素が幼児期の健康・青年期の学力・成人期の労働に与える効果を推定する。本研究の成果は、フッ素の人体への影響に関する定量的な証拠を提示することで、安全で効果的な公衆衛生政策の立案に資すると期待される。
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