| 研究課題/領域番号 |
24K17920
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| 研究種目 |
若手研究
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| 配分区分 | 基金 |
| 審査区分 |
小区分40010:森林科学関連
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| 研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
小林 勇太 東京農工大学, 農学部, 助教 (60900040)
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| 研究期間 (年度) |
2024-04-01 – 2027-03-31
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| 研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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| 配分額 *注記 |
3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2026年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2025年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2024年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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| キーワード | 森林 / 樹木 / 生活史 / 寿命 / 森林動態 / 生活史戦略 |
| 研究開始時の研究の概要 |
多くの動物は、加齢に伴って繁殖力が低下し(繁殖老化)、死亡率が増加する(体老化)。これが植物にどの程度当てはまるのかは検証されておらず、森林プロセスモデルでは、樹木が生殖老化しない・体老化しないことを仮定して計算アルゴリズムが設計されている。近年、生殖老化が世界中の樹木で普遍的に見られることが証明された。本研究では、アジア地域で得られた樹木データを収集し、医療統計学分野で発達した死因解析手法によって、樹木の体老化パターンの解明に挑む。また、雷や台風などの“不慮の事故”による死亡率を排除した内因性死亡率の時間変化を定式化し、生殖老化と体老化が再現できる森林プロセスモデルを開発する。
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| 研究実績の概要 |
本研究では、樹木が加齢によってどのように死に至るかという「体老化」の過程を明らかにすることを目的とし、日本全国で収集された100万本以上の樹木追跡データをもとに、老齢木の死亡率を年齢ごとに推定する手法を確立した。これは、従来の森林モデルで仮定されてきた「樹木は老化しない」という前提に対し、初めて実証的な検証を行うものである。具体的には、個体ごとの成長速度から年齢を逆算し、その年齢ごとの死亡率を推定する統計手法を開発した。その結果、53種の樹木について生存曲線を描くことに成功し、老化に伴い死亡率が上昇する種とそうでない種が存在することを明らかにした。また、老化傾向の種間差をより深く理解するため、各種の形質情報を補完する目的で野外調査を実施し、葉や樹皮、サイズなどの形質データを収集した。さらに今年度は、日本国内で確立したこの手法を、アジア地域を中心とした他地域へ展開するための基盤整備を進めた。発展的な解析として、推定された死亡率を用いて各種の寿命指標(最大寿命、平均寿命)を導出し、これらが気候条件とどのように関係するかを検証した。こうした成果の一部は、査読付き学術誌への論文として投稿を行っており、森林の老化プロセスを取り入れたより現実的な将来予測モデルの構築に向けた重要な一歩となっている。今後は、地域差や樹種特性が老化や寿命に与える影響をさらに解明し、気候変動下における持続可能な森林管理への貢献を目指す。
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| 現在までの達成度 |
現在までの達成度
2: おおむね順調に進展している
理由
令和6年度は、100万本を超える個体データに対して年齢推定と死亡率の計算を実施し、53種において生存曲線の作成に成功した。加齢に伴い死亡率が上昇する種と、そうでない種があることを明らかにし、従来の「樹木は老化しない」とするモデル仮定に再検討を促す成果が得られている。また、死亡率推定に必要な成長データや形質情報を補うため、国内複数地点において野外調査を実施し、葉・樹皮・サイズなどの形質データを収集した。これに加えて、発展的な解析として、死亡率をもとに各種の寿命指標(最大寿命・平均寿命)を導出し、それらと気候条件の関係性についても検証を進めている。研究手法の確立に加え、得られた成果の一部はすでに査読付き国際誌へ投稿済であり、研究成果の対外発信にも一定の進展が見られる。さらに、今後の国際展開に向け、中国をはじめとした他地域のモニタリングデータの整理や比較解析の準備も順調に進行している。以上の点から、本研究課題は当初の計画に沿って着実に進行しており、現時点で順調に進展していると評価できる。
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| 今後の研究の推進方策 |
今後は、日本国内で確立した年齢別死亡率推定手法を、アジア地域を中心とする他地域に展開する。特に、中国や韓国など近隣諸国でも長期モニタリングデータが蓄積されつつあり、これらを活用することで、地域間比較が可能となると同時に、解析の自由度や空間的スケールが拡大する。一方で、生存曲線の作成には、現在いくつかの仮定(例:成長速度と年齢の対応関係、データの均一性)を置いており、地域や種によっては精度にばらつきが生じる可能性がある。今後は、これらの仮定をより洗練された推定モデルに置き換え、特に成長と死亡の非線形関係やプロット間の差異を反映できる構造に改善する。また、死亡率の変化にとどまらず、「死因」の特定を目指す解析にも挑戦する。近年、突風や落雷、病害などの外因性要因と、老化や競争といった内因性要因を分離する解析技術が進展しており、大規模なビッグデータ解析と統計モデリングを組み合わせることで、死因別の寄与率を定量化できる可能性がある。こうした高度な解析を実施するには、さらなるデータの拡充が不可欠であり、国内外の研究機関と連携しながら、モニタリングデータや形質データの収集を継続して進めていく予定である。
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