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細胞個性の可塑性に立脚したヒト腫瘍進化の再定義および新規治療法の開拓

研究課題

研究課題/領域番号 24K21300
研究種目

挑戦的研究(開拓)

配分区分基金
審査区分 中区分55:恒常性維持器官の外科学およびその関連分野
研究機関慶應義塾大学

研究代表者

藤井 正幸  慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 准教授 (00867575)

研究期間 (年度) 2024-06-28 – 2027-03-31
研究課題ステータス 交付 (2024年度)
配分額 *注記
26,000千円 (直接経費: 20,000千円、間接経費: 6,000千円)
2026年度: 7,800千円 (直接経費: 6,000千円、間接経費: 1,800千円)
2025年度: 11,700千円 (直接経費: 9,000千円、間接経費: 2,700千円)
2024年度: 6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
キーワードオルガノイド / 腫瘍進化 / 膵癌 / 小細胞肺癌 / がん / がん進化 / エピゲノム / 細胞個性
研究開始時の研究の概要

がんは単一の体細胞に端を発し、遺伝子変異をはじめとした様々な分子異常を獲得することで成熟していく。この進化過程で、がん細胞は発生組織に由来する元の個性を徐々に失い、独自の個性を呈するようになる。本研究では、この個性進化は主にエピゲノムの揺らぎおよび腫瘍環境によって駆動されると想定し、患者由来オルガノイドおよび先進分子生物学的解析を通じ、大腸癌、胃癌をはじめとした様々な癌の発生および進展を俯瞰的に理解することで、組織横断的な癌進化の生物学的背景やメカニズムを解き明かす。得られた知見をもとに、癌進化プロセスを標的とした新規治療の開拓に挑戦する。

研究実績の概要

1. ヒト膵癌における系譜進化メカニズムの理解
ヒト膵癌には腺扁平上皮癌と呼ばれる管状腺癌から扁平上皮癌への分化傾向を呈する亜型が存在するが、この分化異常のメカニズムの多くは不明であった。ヒト膵癌における扁平上皮分化を統合的に理解するため、腺扁平上皮癌6例を含む55例からなるヒト膵癌オルガノイドライブラリを樹立し、増殖因子依存性の検討およびゲノム、エピゲノム、トランスクリプトームを含む統合的な分子生物学的解析を行なった。その結果、腺扁平上皮癌オルガノイドは遺伝子変異とは関係なくWnt経路非依存的な増殖を示し、また、GATA6やHNF4Aなどの膵管マスター転写因子のH3K27トリメチル化を中心とした広範なエピゲノム異常を認めた。CRISPRを用いた遺伝子編集によってGATA6おいびH3K27脱メチル化酵素であるKDM6Aをノックアウトしたところ、Wnt非存在下においてのみ、扁平上皮形質獲得した。さらに、低酸素環境ではGATA6ノックアウトのみによって同様の表現系を獲得することを見出した。以上の結果から、KDM6A遺伝子変異あるいは低酸素環境によるエピジェネティックな膵管アイデンティティの喪失が扁平上皮への系譜進化を駆動することを発見し、論文報告した(Tamagawa et al., Nature Cell Biology 2024)。

2. ヒト肺癌における系譜変化メカニズムの理解
ヒト小細胞肺癌はもっとも予後不良ながんの一つであるが、その起源や神経内分泌様細胞への系譜変化のメカニズムは不明である。特に、EGFR阻害剤による治療経過中に腺癌から小細胞癌への系譜変化が見られるケースが少なからず存在することが近年指摘されている。肺癌患者より組織を提供いただき、多様な肺癌オルガノイドを樹立した。特に小細胞肺癌に注目し、培養条件の検討ならびに分子生物学的解析を実施した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

系譜進化が顕著な例の一つである膵扁平上皮癌については、計画の通り統合的な解析を通じてその組織学的な進化メカニズムを明らかにすることができ、論文化に至った。肺癌についても肺腺癌における系譜変化による遺伝子変異非依存的なEGFR阻害剤抵抗性の獲得メカニズム、ならびに小細胞肺癌における系譜決定機序について理解が進んでいる。

今後の研究の推進方策

1. ヒト肺癌における系譜変化機序の理解
患者由来オルガノイドの統合解析を通じ、主に1.肺腺癌における遺伝子変異非依存的なEGFR阻害剤耐性の獲得メカニズム、2. 小細胞肺癌おける神経内分泌系統および非神経内分泌系統への分化決定機序、の理解を目指す。1については、EGFRの追加変異なしにEGFR阻害剤への耐性を獲得したオルガノイドを樹立しており、肺胞上皮から逸脱した系譜特性を有することを見出している。トランスクリプトームおよびエピゲノム解析、さらにCRISPRによる遺伝子摂動を用いた検証により、そのメカニズムの理解の深化に努める。また、2.についても同様に小細胞肺癌のサブタイプ割り当てを規定する機序や因子の同定を目指す。

2. 他の癌種における系譜変化の同定
ヒトのがんには膵癌、肺癌以外にも典型的な組織型やアイデンティティから逸脱したものが多く存在する。多くは希少癌であるが、臨床教室と密に連携し、効率的に検体にアクセスすることで、このようながんからのオルガノイド樹立を試みる。並行して、遺伝子編集を用いたマスター転写因子の摂動によって、がんやそれに類する組織がアイデンティティを喪失した場合に、系譜がどの様に変化するのか検討したい。

報告書

(2件)
  • 2024 審査結果の所見   実施状況報告書
  • 研究成果

    (4件)

すべて 2025 2024

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件)

  • [雑誌論文] Understanding the Differentiation Pathway to Bestrophin 4-Positive Cells in Human Colonic Epithelium2025

    • 著者名/発表者名
      Wakisaka Yusuke、Sugimoto Shinya、Oda Mayumi、Pastuhov Strahil、Fujii Masayuki、Sato Toshiro、Takahashi Sirirat、Matano Mami、Ohta Yuki、Saito Megumu、Kanai Takanori
    • 雑誌名

      Gastroenterology

      巻: - 号: 1 ページ: 00412-00413

    • DOI

      10.1053/j.gastro.2025.01.248

    • 関連する報告書
      2024 実施状況報告書
    • 査読あり
  • [雑誌論文] Wnt-deficient and hypoxic environment orchestrates squamous reprogramming of human pancreatic ductal adenocarcinoma2024

    • 著者名/発表者名
      Tamagawa Hiroki、Fujii Masayuki、Togasaki Kazuhiro、Seino Takashi、Kawasaki Shintaro、Takano Ai、Toshimitsu Kohta、Takahashi Sirirat、Ohta Yuki、Matano Mami、Kawasaki Kenta、Machida Yujiro、Sekine Shigeki、Machinaga Akihito、Sasai Ken、Kodama Yuzo、Kakiuchi Nobuyuki、Ogawa Seishi、Hirano Tomonori、Sato Toshiro, et.al
    • 雑誌名

      Nature Cell Biology

      巻: 26 号: 10 ページ: 1759-1772

    • DOI

      10.1038/s41556-024-01498-5

    • 関連する報告書
      2024 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] Genetic Modeling of Colorectal Cancer Evolution with Somatic Stem Cell Organoids2024

    • 著者名/発表者名
      Masayuki Fujii
    • 学会等名
      The Eighth JCA-AACR Special Joint Conference
    • 関連する報告書
      2024 実施状況報告書
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] オルガノイド技術を用いた 大腸癌転移メカニズムの理解2024

    • 著者名/発表者名
      藤井正幸
    • 学会等名
      第83回日本癌学会学術総会
    • 関連する報告書
      2024 実施状況報告書
    • 招待講演

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公開日: 2024-07-03   更新日: 2025-12-26  

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