| 研究課題/領域番号 |
24K21734
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| 研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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| 配分区分 | 基金 |
| 審査区分 |
中区分29:応用物理物性およびその関連分野
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| 研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
生田 博志 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (30231129)
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| 研究分担者 |
山本 明保 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20581995)
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| 研究期間 (年度) |
2024-06-28 – 2026-03-31
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| 研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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| 配分額 *注記 |
6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2025年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2024年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
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| キーワード | 鉄系超伝導体 / トポタクティック反応 / SmFeAsO / 超伝導線材 |
| 研究開始時の研究の概要 |
超伝導は医療機器やリニア新幹線など、社会生活を支える重要な技術に利用されている。これらに利用されている超伝導体は、液体ヘリウムでの冷却が必要であるが、近年、ヘリウムの供給不足が深刻である。そのため、無冷媒動作可能な超伝導線材の開発が求められている。一方、近年発見されたLnFeAsO系超伝導体は、高いポテンシャルを有するにも関わらず、単相試料の合成が困難である。そのため、線材特性は未だ実用レベルに大きく及ばない。そこで、薄膜成長で培った知見を応用した新規の手法により、パウダー・イン・チューブ法という簡便な方法で高温動作可能な線材の開発に取り組む。
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| 研究実績の概要 |
薄膜研究で培った知見をバルク材料に応用することで、LnFeAsO母相バルク体の酸素を水素で置換して、超伝導組成のLnFeAs(O,H)を得ることを目的に研究を進めた。Ln元素には超伝導転移温度が最も高いSmを選択した。最初に分担者の山本を中心に、遊星式ボールミルを用いた高エネルギー混合によるSmFeAsO多結晶体の合成に取り組み、条件最適化を通じて従来より高純度な試料が得られる手法を確立した。この母相試料を様々な条件で、CaH2ないしはTiH2を水素化剤として熱処理した。熱処理後はX線回折ピークのシフトの有無で格子定数の変化を調べ、さらにピークシフトが見られた試料は抵抗率や磁化率を測定して超伝導発現の有無を調べた。 まずはCaH2を水素化剤に、薄膜試料の標準的な条件でSmFeAsOペレット体を熱処理したが、X線回折、磁化率測定のいずれからも、水素置換の兆候が見られなかった、また、薄膜では還元作用のある金属箔で包むと水素化が進行するが、バルク試料に適用しても顕著な違いは見られなかった。そこで改めてバルク体を用いて、熱処理温度や反応時間などを様々に変化させた。その結果、CaH2の量をSmFeAsOに対して極端に多くした時に、わずかに格子定数の変化が見られた。また、並行して薄膜で実験を進めた結果、TiH2でも水素置換反応が生じることが分かった。そこで、これをバルク体に適用したところ、薄膜より高温での熱処理が必要であったが、XRDピークのシフトが観測された。さらに、SmFeAsO粉末にCaH2またはTiH2を混合することでも水素化を試みた。多結晶粉末と金属水素化物を乳鉢混合または高エネルギー混合することで試料を作製し、金属水素化物の量や処理温度に応じて、XRDピークがシフトすることが確認された。また、混合方法によって格子定数の変化の仕方が異なることも明らかとなった。
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| 現在までの達成度 |
現在までの達成度
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は最初に遊星式ボールミルを用いた高エネルギー混合によるSmFeAsO母相多結晶体の合成条件を確立することに取り組んだ。この条件最適化の実験は順調に進み、わずかに不純物相が析出することがあるものの、以後の実験に十分な純度を持つ高品位な試料を作製する条件を確立することができた。一方で、トポタクティック反応を用いたバルク試料の水素置換は、薄膜試料に比べて予想以上に困難であることがわかった。薄膜で確立している条件を、単純に体積差などを考慮して調整しただけでは水素化反応が進行しないことが明らかになった。そのため、金属水素化物の割合を増加したり、熱処理温度を高めるなど、様々な条件での熱処理を行った結果、まだ変化量は小さいものの、水素置換反応が見られた。そこで発想を変えて、SmFeAsO粉末と金属水素化物を直接混合して処理したところ、金属水素化物の量や処理温度に応じて、XRDピークがシフトすることが確認された。以上のように、一部で想定外の結果に対応するための時間を要したが、結果的にはトポタクティック反応によるSmFeAs(O,H)バルク体の作製を初めて実現するなど、おおむね順調に進展している。
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| 今後の研究の推進方策 |
今年度の一連の実験を通じて、SmFeAsO粉末と金属水素化物を直接混合した場合に、トポタクティック反応による水素置換がバルク体で可能であることがわかった。今後は、さらに金属水素化物の量や焼成条件を変化させることで、水素置換量を変化させた試料の作製に取り組む。また、これらの試料の超伝導特性の測定も行う。一方で、当初想定していた、SmFeAsOと金属水素化物を直接混合しない手法でも、まだ水素置換量が小さいものの、最適な処理条件がある程度絞られてきた。今後は、さらに条件探索を進め、水素置換量を大きくすることで、異相を含まない試料の作製を試みる予定である。
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