多和田葉子は『エクソフォニー―母語の外へ出る旅』(2003)において、ドイツ語からの触発を述べ、「エクソフォニー」を「母語の外に出た状態一 般を指す」と定義し、「エクソフォン文学」を提唱した。そこでは、母語でない言語で作品を創作する際に、母語と第二言語が作品に相互に影響する面白さが指摘されたが、同様な面白さは彼女の日本語小説にも見られる。その中で、1990年代の作品には、彼女の言語観、翻訳観、物語論が反映されていた。同書が出版前後、関心は女性表象や日本の表象に移り始めた。本研究は彼女の2000年代の作品を取り上げ、同書を境に変化が現れた多和田文学と「エクソフォン文学」との関連性を探求する。
|