| 研究課題/領域番号 |
24K23635
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| 研究種目 |
研究活動スタート支援
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| 配分区分 | 基金 |
| 審査区分 |
0907:口腔科学およびその関連分野
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| 研究機関 | 日本歯科大学 |
研究代表者 |
埴 太宥 日本歯科大学, 生命歯学部, 助教 (11000414)
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| 研究期間 (年度) |
2024-07-31 – 2026-03-31
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| 研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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| 配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2025年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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| キーワード | 口腔扁平上皮癌 / 神経周囲浸潤 / 癌細胞移植モデル / トランスクリプトーム解析 / 口腔癌 / 扁平上皮癌 |
| 研究開始時の研究の概要 |
口腔扁平上皮癌(OSCC)において神経周囲浸潤(PNI; Perineural invasion)は患者の予後悪化に関わる組織病理学的特徴の一つである。本研究では、OSCCにおけるPNIの分子機序を解明することを目指す。この目的に向けて、公開データベースに登録されているOSCC患者の情報からPNIに関与する候補遺伝子を抽出し、包括的な遺伝子発現解析を実施する。得られた結果を基に、ヌードマウス舌へのヒトOSCC細胞株移植実験を通じてPNIの進展を促進する分子機序を明らかにし、将来的なOSCCの治療ターゲットの評価に貢献したい。
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| 研究実績の概要 |
本研究は、口腔扁平上皮癌(OSCC)における神経周囲浸潤(perineural invasion; PNI)の分子機構を解明することを長期的な目標とし、その第一段階として、PNIに関与する分子の網羅的探索を行った。初年度は、TCGA(The Cancer Genome Atlas)に収載された頭頸部扁平上皮癌症例(Project ID; TCGA-HNSC)のRNA-seqデータおよび臨床情報を活用し、早期(T1T2N0M0)の舌扁平上皮癌(n=13)および口底扁平上皮癌(n=7)に絞って、PNI陽性・陰性患者群間の比較解析を実施した。さらに、神経走行に沿って浸潤する性質を示すHO-1-u-1細胞(ヒト口底扁平上皮癌由来)に着目し、公開データベースから取得したOSCC細胞株RNA-seqデータを再解析することで、細胞株レベルでのPNI関連因子の候補を絞り込んだ。その結果、Wntシグナルの調節に関わるSFRP5のほか、様々なnon-coding RNAがPNI陽性患者群で顕著な高発現を示すとともに、HO-1-u-1細胞で高発現していることが明らかとなった。頭頸部扁平上皮癌患者のTCGAコホートにおける生存解析では、これらの分子の発現量が高い患者群で有意に予後不良を示すこともわかった。実験系では、HO-1-u-1細胞移植マウスモデルを構築し、舌組織における神経浸潤様式をin vivo系で再現、今後の機能的検証や遺伝子操作実験に向けた実験基盤を整備した。ここまでの成果から、non-coding RNA(特にいくつかのsmall nucleolar RNA; snoRNA)による新たなPNI制御ネットワークの可能性に注目しており、次年度はその生物学的意義の解明に向けた実験を展開する予定である。
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| 現在までの達成度 |
現在までの達成度
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までに、in silico解析および実験的検証を計画通り進めており、PNI関連分子候補の絞り込みは概ね完了している。まず、TCGA-HNSCCコホート(患者数 n=528)からPNI情報を含む症例(舌OSCC n=13; 口底OSCC n=7)を抽出し、RNA-seqデータに対してDESeq2解析(FDR<0.05、|log2FC|>1)を行った。これにより得られた発現変動遺伝子のエンリッチメント解析により、細胞運動・線維化関連経路の活性化を見出し、PNI陽性患者群で細胞外マトリックス構築の関連遺伝子が抑制されていることを明らかにした。加えて、OSCC細胞株を移植したヌードマウス舌組織をpan-CK/TUBB3の免疫組織化学と三次元立体構築で解析することにより、腫瘍塊から神経束に沿って伸展増殖するHO-1-u-1の詳細な組織学的表現型を明らかにできた。浸潤は運動神経・感覚神経の区別なく生じると考えられたが、確証は得ておらずさらなる解析が必要である。分子解析では、公開細胞株RNA-seqデータをROKU法によって再解析し、HO-1-u-1に高発現する遺伝子群を同定した。得られた分子種の80.7%はprotein coding gene、残りはnon-coding RNA(うちlncRNAが8.2%、miRNAが3.0%、snoRNAが1.4%)であった。Protein coding geneでは、Wntシグナル抑制因子SFRP5遺伝子がPNI陽性患者とHO-1-u-1で共に高発現を示すことを確認した。また、HO-1-u-1で高発現を示したsnoRNA分子については、頭頸部扁平上皮癌患者での高発現と生存期間短縮が相関することも判明した。ここまでの解析でPNI成立に関与する候補分子が複数得られており、研究は順調に進行していると考えている。
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| 今後の研究の推進方策 |
今後は、候補として得られた分子群のうち、特にsnoRNAに焦点を当てて研究を進める。これまで、snoRNAとPNIの関係は未解明であり、non-coding RNAによる精緻な制御メカニズムが存在するのではないかと期待している。なお、protein-coding geneの中で見出したSFRP5は、分泌タンパクであり、PNIのみならず腫瘍微小環境全体において重要な役割を持つ可能性が高いことから、本研究計画から切り分けて別の研究課題とした。幸い若手研究(課題番号 : 25K20255)として採択され、解析の準備を進めている。 2年目の研究方策として、まず、snoRNAの細胞内局在をcell fractionationとqPCRにて確認する。通常、snoRNAはコアタンパク質と複合体を形成して核小体に局在し、合成されたrRNAの化学修飾に働く。そこで、RNA機能として塩基配列を精査し、変異の有無や本来のsnoRNA機能への影響、新規機能の可能性を評価する。また、協働するタンパク質に着目し、RNA pull-down assayおよびLC-MS/MSによる結合タンパク質の同定を試みる。この解析によって、癌細胞で高発現しているsnoRNAがどのような分子ネットワークの中でPNIに関与するのかを明らかにする。上記の解析を進めると同時に、HO-1-u-1細胞でのsnoRNAノックダウンまたはノックアウトを実施し、同所移植モデルを用いてPNI表現型の変化を観察する予定である。経時的な試料採取と免疫組織化学および三次元再構築を併用することで、時空間的な組織レベルでのPNI抑制効果を明らかにすることが可能と考えている。以上より、分子・細胞・組織の各レベルでsnoRNAのPNI制御機構を体系的に解析することで、口腔癌の新たな病態理解と将来的な診断・治療標的の創出につなげることを目指す。
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