縄文文化期の遺跡からニワトコ属核が頻繁に出土しており,縄文人が何らかの用途でニワトコ果実を利用していたと考えられる.本研究では,果実も大きくより有用であった可能性があるエゾニワトコが北海道から本州へ拡散されたという「エゾニワトコの人為拡散仮説」を検証するために,更新世から近世までの出土核の形態分析により,核形態の時空間的な差異を明らかにする.さらに,ニワトコ果実利用の事例のある北米北西海岸の先住民の遺跡における核の出土事例とニワトコ利用の民族事例を縄文文化と比較し,縄文文化のニワトコ果実利用を推定する.結果をもとに,縄文文化の果実利用が現在のニワトコの形質と生態に与えた影響を明らかにする.
|