本研究は、貧困にある子どもの進路選択に対する支援が、個人の自己決定権の尊重と利益の保護との間に葛藤が生じやすいことを問題として、正当化可能なキャリア教育の実践の在り方を示すことを目的としている。具体的な理論的基盤として、被介入者の自己決定権の尊重と利益の保護との間に生じる緊張関係を乗り越えようとするパターナリズムと、ある個人の選択がそれしか選びようがなかった結果としてなされることを問題にするケイパビリティ・アプローチを用いる。これらの哲学理論によって正当化される介入の条件と、キャリア発達論等を接続し、不当な介入を制限する論理を備えたキャリア教育実践の指針の提示を試みる。
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