本研究はカントの「啓蒙」の具体的なプロセス、および啓蒙へと導く教育のあり方を、「成年性」概念の諸性格と「抵抗」概念を手がかりとして探究する。 第一に「自らに責任のある未成年状態からの脱却」というカントの啓蒙の定義に含まれる「(未)成年性」概念について、そのイデオロギー的側面と社会批判的側面についての近年のドイツ教育学研究における議論を批判的に参照しつつ検討する。第二に「啓蒙」を引き起こしうる教育のあり方について、他者から「抵抗」を受けるという経験の意味の探究から考察し、「抵抗」し合う諸個人を前提とするカントの世界市民思想へと接続することを目指す。
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