本研究はジル・ドゥルーズにおける主体形成の論理、とりわけ権力の支配から「逃走線を引く主体」形成の方途を研究する。ドゥルーズは、既存の支配的な秩序から自由になることに強い関心をもっており、その変容の経験を「生成変化」と呼んでいた。これまで教育学では変容する側に注目してきた。本研究ではこの変化の論理を踏まえつつ、「他者の介在」という軸を設定し、彼の倒錯者論、個体化論、スピノザ論を検討していく。ドゥルーズ哲学における主体形成の論理を明らかにすることで、むしろ教師の働きかけが「変容」にとって重要な契機であることを示す。その成果は、近年の教師の役割を再検討する諸研究に新しい教師像を提供し得るだろう。
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