従来の国際政治研究は、地理的近接性を国家間の脅威認識を規定する条件の一つと見なしてきた。だが、地理的近接性を所与の条件とするこのアプローチは、国家は時に遠方の国家に対しても脅威認識を抱くという現象を説明することはできない。本研究は、心象地理をはじめとする人文地理学の視点を導入することで、国家が、遠くに位置するにも「かかわらず」当該国家に対して脅威認識を抱いていると説明するのではなく、遠方に対するイメージが変容したことで当該国家に対して脅威認識を抱くようになっていったことを説明可能とする。本研究は、空間イメージの発展と変容に関する歴史学的手法と定量的手法を併用する。
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