本研究は、20世紀のアメリカ南部文学を主な研究対象としている。南部文学では特殊な歴史と地域性のために、人種やジェンダーというイデオロギーが問題となるが、本研究はそれらに加え、日常の意義を再考する。それによって個人と、南部の地域的なイデオロギーとの関係性を見定め、日常という無意識的で私的な領域が、どのようにイデオロギーに影響されるか、またはそれに対抗するのか、というメカニズムを解明することを目的としている。そこで得られた成果は、人種やジェンダー、セクシュアリティに関するイデオロギーが複雑に影響しあい、根深い分断を生んでいる現代社会にも反省的な視点を提供するものである。
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