研究課題
特別研究員奨励費
本研究では冷戦期に芸術と社会の諸問題を、音楽を通じて熟考していた作曲家たちの創作とその受容の動態に着目する。戦後に形成された「集団的記憶(共有する記憶)」が作品の中でどのように表象され、次世代にはいかに受け継がれているのかを、①記憶理論や聴衆類型論、②第二次世界大戦を経験しその記憶を再現した作曲家の言説や創作活動、③また、その創作に対する戦後生まれの聴き手の美的経験の内実等、音楽学、美学、文化史学を横断する学際的視点から検討する。この理論、事例、実証研究を通じて、聴覚芸術におけるポストメモリー理論を体系的に構築し、ひいてはこれまで二項対立的に捉えられてきた芸術と社会の関係への再考を促す。