我々の脳は無数の神経細胞が複雑に結合して情報のやりとりを行う,複雑系である.非線形力学系の理論的観点からは,このような複雑系は同一の入力情報に対しても初期状態の僅かな違いによって全く異なった応答を示してしまうことが知られている.しかし我々が体験的に知るように,実際には脳は同一の入力(感覚刺激)に対しては同一の応答(神経活動や知覚等)を示す一貫性を持っている.この矛盾を解決するメカニズムは,未だに明らかになっていない.本研究はシミュレーション,ヒト行動実験および脳波計測の融合的アプローチを通して,脳活動および知覚が特定の刺激入力に対して一貫した応答を示すようになるメカニズムの説明を目指す.
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