個体は素朴には、自己同一性・統一性・独立性をもった対象とされるが、その内実は必ずしも明らかではない。実際、個体の存在論的身分は古くから形而上学で探求されてきたが、個体性概念は個別科学(物理学・生物学など)においても問題となりうる。そこで、本研究は、個体の存在論的身分を現代の自然科学の知見にも調和した仕方で解明することを目的とする。本研究では特に物理科学における個体の存在論を扱うが、物理理論の構造や形式の分析にくわえて、素朴な個体性概念が問題となりうるケースの現象論にも注目する。これにより、新たな個体性概念の獲得および、日常的直観ベースの存在論と科学的事例ベースの存在論との滑らかな結合をめざす。
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