本研究は、交易ディアスポラにルーツを持つ移民集団の現代的様相から、海域世界における歴史的な地域間の連関の、国民国家時代における展開を解明するものである。特に、ベンガル湾海域で活躍した商人集団をルーツとするマレーシアのインド系(タミル系)ムスリム移民に着目し、近代以降のマレー半島で常に民族的定位が曖昧なマイノリティと位置付けられきた彼らがいかにしてその移民社会を今日まで存続させてきたのかを、出身地域である南インドとの間で今なお続く社会的紐帯や人の往来との関連の中で検討する。主な調査手法は当集団の近現代史に関する文献調査とマレーシア及びインドにおける移住史や両地域間の紐帯に関する現地調査である。
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