本研究では、ケニアの植民地化に伴って、本格的に活動を開始したキリスト教宣教によって、ケニアの「普通の」人びとの世界観や思想がいかに変化したかを明らかにする。宣教師は現地の言語に聖書を翻訳する過程で、口頭で語られていたローカルな概念の意味内容を宣教の文脈に沿うように変化させた。既存研究では、この過程を「伝統的に」保持されてきた概念が消失するものとして否定的な見方でのみ捉えてきた。一方で本研究では、このような過程で残された史料群を活用することで、宣教活動がケニアの「普通の」人びとの認識論的枠組みにどのような変化を与えるものであったかを検討する。
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