脱植民地化以降のオセアニア地域研究では、先住民と多様な出自を持つ移民やその子孫が共生するなかで、民族間関係の安定が重要な課題となってきた。本研究では、現代フィジーにおける民族間関係の力学を、近年フィジーにおいて民族を越えて広がる嗜好品ビジネスを通じて明らかにする。先住系フィジー人は、伝統的にコショウ科の植物カヴァを原料とする飲用嗜好品を利用してきた。近年、国内外における需要拡大を背景に、カヴァを商品とするビジネスは一大産業になっており、そこには多民族の参与がみられる。この点を踏まえ、カヴァの商品ネットワーク内での民族間関係や民族間分業の動態を現地調査から明らかにすることで、本課題に取り組む。
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