従来の日本の企業/組織風土においてリスクは可能な限り回避すべきものとして捉えられてきたのに対し、現在のスタートアップ企業ではリスク選好を積極的に評価する姿勢も生まれつつある。こうした状況の変化は、日本的な経営のなかでローカライズされてきた「部分最適化」の表れとしても同時に捉えられ、そこには多分に在地の論理が内包されている。本研究は、日本の起業文化、とりわけアントレプレナーシップに着目し、スタートアップ企業におけるリスク管理のあり方を一実践者として緻密に記述すると同時に、それを通文化的な文脈に布置した上で、日常的な意思決定に影響を与える具体的な社会・文化的要因を特定し、企業実践への還元を試みる。
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