研究課題
特別研究員奨励費
初期ネーデルラント絵画は、同時代ドイツ絵画に絶大なる様式的影響を与えた一方、様式以外の諸要素(図像選択・物語表現・作品の形態)に関しては、逆にドイツからも多くの造形語彙を吸収したと予見される。本研究は、文化越境論という新たなマクロ的視点から、両地域間の美術交流を双方向的に捉え直すものである。ロヒール・ファン・デル・ウェイデン、ハンス・メムリンク、「聖ルチア伝の画家」に関するケース・スタディを通じて、両地域間の美術交流の立役者としてのメムリンク像を再構築するだけでなく、従来ドイツとの関係では論及されなかった画家や作品についても「知られざるドイツ性」を浮き彫りにすることを目指す。