本研究は、高度成長期の出稼送出村を対象に、男性出稼者不在の村落社会の暮らしの内実を明らかにする。その際、先行研究では「家制度の犠牲者」として言及されがちだった女性の働きを中心に、聞き取りや資料を用い調査する。申請者が行ったこれまでの研究では、男性不在時に女性が、私的/公的領域の双方で主体的に行動していたことがわかった。つまり出稼送出村では、男性不在の状況を逆手にとって女性の自由裁量領域を広げ、地域を維持してきたのだ。日本では関係人口など、都市―農村間を往来する人材に注目が集まっている。本研究を通し、定期的移動者を含め多様な成員を内包しつつある、近年の村落社会のあり方を問い直すヒントとしたい。
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