研究概要 |
研究代表者の小川は研究協力者の岩渕 司と共同で, 2乗のべき型非線形項を持つ非線形シュレディンガー方程式の適切性と非適切性の臨界を研究し, 空間1次元においては非斉次Sobolev空間のもつ非斉次構造が, 不変スケールから予想される臨界スケールに至ることを阻害することを示し, さらに臨界性を実補間空間であるベソフ空間で分類した場合の臨界補間指数を同定した. また2次元に対しては予想される臨界スケールに至ることを示した. 4次元以上においては堤誉志雄による最良の結果が知られており, 2次の非線型性に対して残る問題は3次元のみとなった. また同様の事実は非線形熱方程式に対しても成立することを述べた. これらの結果は解の形式的な漸近展開を, モデュレーション空間において正当化し, 解の2次近似が臨界空間よりも広いクラスで解の不安定性を引き起こすことに起因する. 漸近展開を正当化することにより, 従来あった背理法による議論を経由せずに証明が可能となる. 一方, 半導体モデルに現れる, 移流拡散方程式には双極性のモデルと単極性モデルが存在する. 双方の初期値問題に対しても同様な臨界適切性を研究し, 双極性のモデルは単極モデルよりも適切な函数空間のクラスが狭いことを, 非線形干渉の対称性に着目して示した. また副産物として, 2次元渦度のNavier-Stokes方程式の可解性について既存の結果が双極型移流拡散方程式の非線形項と類似であるにもかかわらず, 単極型と同等の函数空間まで適切性が示されることについて, 非圧縮条件が非線形構造に対して対称性を与えることに起因することを突き止めた.
|