研究課題
基盤研究(C)
第1に、2013年4月に国会に提出されたものの、継続審議となっている「消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律案」(消費者裁判手続特例法案)の内容を、消費者被害救済と事業者のコンプライアンス経営の有機的結合に資するものかどうかの観点から詳細に検討した。少額多数被害の消費者の損害を消費者団体が賠償請求することによって、従来よりは被害者救済に資するが、コンプライアンス促進の観点からはまだ不十分であり、制度の普及とともに他の仕組みとの組み合わせが必要であることが明らかになった。第2に、中国の消費者権益保護法の改正案が2013年4月の全国人民代表大会常務委員会において公表されたので、その内容や改正方針の日本語訳を入手して、詳細に検討した。その結果、①詐欺行為の場合の損害賠償の額について、従来は価格の2倍だったのを3倍に引き上げている点、②商品・サービスに欠陥があることを知りながら、詐欺行為によって提供し、消費者に生命・健康上の被害が生じた場合は、実損害額の2倍以下の額の損害賠償を請求できる点、③多数消費者の合法的な権益を侵害する行為に対して、中国消費者協会などが公益訴訟を提起することができる点、④商品・サービスが人身・財産の安全基準に不適合の場合や偽物であったりした場合に、工商行政管理機関は違法所得の10倍以下の制裁金を課することができる点などにおいて、コンプライアンス促進に資する内容の提案がなされていることが明らかになった。8月に北京で開催された中国消費者権益保護法学会のシンポジウム、及び中国人民大学におけるアジア政策フォーラムの場において、日本法との比較の観点からコメントするとともに、中国側研究者と意見交換した。9月には、内容を一層強化した改正第二次案が公表されており、この案についても検討を進めている。
すべて 2013
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 2件)
Hitotsubashi Quarterly
巻: 40号 ページ: 26-29
都市問題
巻: 104巻10号 ページ: 40-48