研究課題
基盤研究(C)
心臓の発生・形態形成の制御機構の研究は、先天性心疾患の病因解明だけではなく、再生医療や新規治療戦略の開発に必須のテーマである。特に、心臓中隔や弁の前駆組織である「心内膜床」は心臓形態形成に特有の複雑な構造をつくりだすために非常に重要な役割を担い、その形成異常は様々な先天性心奇形の原因となる。そこで本研究では、心内膜床形成におけるBMP9/BMP10およびALK1受容体の意義を明らかにするため、Hrt転写因子を中心とした新規のALK1シグナル下流因子の発現制御機構と機能に焦点をあて、発生学的・分子生物学的手法を用いて多面的な解析を行った。心内膜床形成におけるBMP9→ALK1シグナルのターゲット因子を同定するために、ヒト臍帯動脈内皮細胞(HUAEC)にBMP9を添加し、その遺伝子発現の変化を網羅的に解析したところ、Tmem100と命名された新規膜タンパクをコードする遺伝子の発現が亢進していた。また、興味深いことに、HesやHrtなど、Notchシグナルの下流転写因子の発現亢進も認められた。そこでTmem100およびHrt遺伝子欠損マウスの解析を行ったところ、これらのマウスは心臓形態に異常を示し胎生致死になることが明らかとなった。心内膜床形成過程におけるTmem100およびHrt遺伝子の役割を検討するために、心内膜床形成に重要とされる様々なシグナル伝達系のターゲット因子の発現を免疫染色を用いて検討したところ、Tmem100欠損マウスでは細胞内カルシウムシグナルのマーカーであるNFATc1の局在異常が、またHrt欠損マウスではTGFbシグナルの下流ターゲット因子であるSlugの発現が低下していることを見出した。以上の結果から、BMP9/10→ALK1シグナルはカルシウムシグナルやNotchシグナルとクロストークして心内膜床形成を制御していることが示唆された。
すべて 2014 その他
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (6件)
Genesis
巻: 52 号: 11 ページ: 897-906
10.1002/dvg.22825