研究課題
基盤研究(C)
我々は新規造血幹細胞マーカーとして血管内皮関連抗原endothelial selective-adhesion molecule (ESAM) を同定し、造血幹細胞上のESAM発現が細胞周期の回転とともに著明に上昇し、造血幹細胞の有用な活性化マーカーであることを明らかにした。本研究においては、ESAMノックアウトマウスを用いて、抗腫瘍薬5-FU投与による骨髄抑制後に、系統ごとの血球回復を検討した。その結果として、ESAMノックアウトマウスにおいて、5-FU投与後に貧血が遷延し、骨髄中の未熟赤血球前駆細胞から赤芽球までの赤血球系細胞が減少していることが明らかとなった。移植実験により、環境側ではなく血球(造血幹・前駆細胞)側のESAMが、血球回復に重要な働きをしていることが示唆された。またフローサイトメトリーを用いた検討にて、赤血球前駆細胞上のESAM発現が、骨髄回復期に上昇することが明らかとなった。5-FU投与後に生じる造血幹細胞分画や赤血球前駆細胞でのESAM発現上昇が、骨髄回復、特に赤血球回復に重要な働きをしていることが示唆された。野生型マウスと、ESAMノックアウトマウスでの、5-FU投与8日目の未熟赤血球前駆細胞分画における遺伝子発現の差異を、マイクロアレイ法で網羅的に解析したところ、ESAMノックアウトマウスにおいて、血球分化や細胞運動に関連する遺伝子発現が全体的に低下していた。また、赤血球系分化に重要な働きをする転写因子GATA1の下流遺伝子の多くがESAMノックアウトマウスにおいて低下しており、骨髄抑制後の赤血球造血にESAMが重要な働きをすることが示唆された。
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