研究課題
基盤研究(C)
25年度および26年度までに、歯髄刺激の繰り返しが血中カテコラミンの遊離抑制を招来し、歯髄刺激には侵害性と報酬系の両面を持つこと、また歯髄刺激に対する海馬の応答はHabituationによる応答減弱を来さないこと、また、その理由として歯髄刺激時に海馬にθリズムバーストを生じていることが考えられることまで明らかにした。27年度における研究目的は、歯痛の情動記憶メカニズムにおける海馬の関与を明確にさせ、その後海馬と扁桃核さらに帯状回との連携を検討することにある。本研究において補助事業廃止に至るまでに、歯髄刺激による海馬の長期増強が、海馬CA3領域のテタヌス刺激時と同様に認められることを見出した。このことは、従来一連の研究の中で得られた結果と合わせると、歯髄刺激が海馬を経由して情動記憶として定着するものであることが示されたことになる。さらに、歯髄刺激による情動記憶が、一方では中枢感作という形で、末梢における疼痛応答に対する影響を持つのかについても調べた。方法として、薬剤による末梢の疼痛抑制と中枢の疼痛抑制を生じさせた状況下で、歯髄刺激による海馬長期増強について調べることとした。その結果、中枢の疼痛抑制下では歯髄刺激による海馬の長期増強が生じないことが分かった。このことは、歯髄刺激すなわち歯痛は、短時間の急性痛であっても、歯痛という疼痛の性状は中枢性の疼痛感作を生じる可能性を示している。以上、25,26および27年度の結果から、歯痛は海馬を介して情動記憶として定着、確立されることが明らかとなった。今後は、同様の研究方法によって、扁桃核および帯状回についても調べることによって、歯痛の情動記憶に関する大脳辺縁系の連携が審らかになるはずである。
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Neurological Research
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日本歯科評論
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