研究課題
挑戦的萌芽研究
本研究は、海馬CA3-CA1経路に備わる構造的左右非対称性が海馬関連ネットワークの構築・維持とその記憶形成機能において果たす役割を明らかにすることを目的としていた。そのために、海馬CA3-CA1路の構造的左右非対称性を持つ野生型マウスと左右非対称性を喪失したivマウスとを用いて各マウスの空間記憶形成機能、海馬と海馬関連ネットワーク内の神経活動を検討した。まずivマウスの空間記憶形成機能、海馬と海馬関連ネットワーク内の神経活動を検討するため、野生型コントロールマウスとiv/+コントロールマウス、iv(iv/iv)マウスの記憶機能と記憶課題中や休息中の海馬と海馬関連領域の局所集合的な細胞外神経活動を調べた。記憶課題として、物体探索課題と聴覚性オドボール課題を用いた。結果、ivマウスは物体探索課題において活動性が低く空間認識記憶に障害を示した。また、ivマウスは、聴覚性オドボール課題において、音刺激提示後の海馬θ波の活動が、他のコントロールよりも亢進した。これらのivマウスの記憶障害や神経活動の異常は、海馬機能において、海馬CA3-CA1経路の左右非対称性が重要であることを示す。更に海馬関連ネットワークの非対称性の構成要素が欠けた場合にどのような記憶障害が起きるか検討するため、固有海馬のCA3とCA1を左右の区別をして損傷し、その時のコントロールマウスとivマウスの記憶機能を調べた。その結果、iv(iv/iv)マウスはいずれの損傷でも空間記憶障害を示し、野生型(+/+)マウスではいずれの損傷においても空間記憶機能は保持されていた。この記憶機能保持は、左右の海馬の機能補償作用によると考えられる。しかし、iv/+マウスは右CA1および左CA3を損傷した際に空間記憶障害がみられた。これは、海馬回路非対称性が保たれているとされるiv/+マウスに機能補償を妨げる異常があることを予測させる。
すべて 2014 2013
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (6件) 図書 (1件)
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