血液と生理食塩水の緩和時間の差を利用した差分画像により、造影剤禁忌症例でも造影剤を使用した場合と同等の質の高い検査や治療ができることを最終目的とする。将来的には動注化学療法に際して動注カテーテルからの薬剤分布領域の描出を目指すが、今回は流体ファントムによる実験を行った。 【方法】ファントムは3本に分岐するガラス製の分岐ファントムで内腔に血液疑似液を流しておき、分岐の直前より生理食塩水またはGd造影剤(100倍希釈マグネビスト)を注入した。撮影はb-FFE法 TR/TE/FA=4.12/2.06/80、(撮像時間12.5秒)を基本に行った。至適撮影条件の検討ではk-space充填方法(linearとlow-high)、FA(40°~80°)、T2 prepの有無を変更しながら、流入部の血液疑似液と生理食塩水の信号強度比で求めた。 【結果】生理食塩水/血液疑似液の信号強度比はlow-highでFAが80°、60°、40°の時それぞれ、2.04、1.83、1.50であった。linearではFAが80°、60°の時それぞれ2.19、1.97であった。FA80°の時T2 prep offでは2.04、onでは2.16であった。結果、生理食塩水と血液疑似液との信号強度比が高くなるのはlow-highよりlinear、FAは深い方、T2 prepは有の時であった。 生理食塩水注入中と注入前の差分画像はGdによる造影画像に視覚的によく一致していた。 【考察】分枝流体ファントムにおいて、3つの分岐間で流量が不平等になることの理由やその程度の定量的評価は今回の検討内では行うことはできなかったが、視覚的には生理食塩水注入による差分画像はGd造影剤注入による画像とよく一致していた。MRでの流体の信号強度は流速によっても大きな影響を受ける事から今後は流速を様々に変化させての検討も重要と考えられる。
|