本研究では、第一に、質問紙調査によって、行動の責任評価や賞賛・非難にはさまざまな要因が関与していること、そして要因は個人内・個人間で変化することを明らかにするとともに、哲学的な自由意志論はこのような実態をふまえ、常識的な概念枠組の部分的な修正という作業を必要とすることを明らかにした。第二に、いわゆる実験哲学研究の哲学的な意義についてより一般的に考察し、思考実験にかんする人々の直観が対立したり、変動したりする際に、哲学者の専門性などを持ち出して直観の信頼性を擁護することは困難であることを明らかにした。
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