本研究の目的は、大田南畝が長崎滞在中に詠じた作品の精読を通して、約一年間にわたる長崎滞在中の体験が、南畝の文学活動に及ぼした影響について考察することにある。 主たる研究対象は、「瓊浦八景」と「崎鎮八絶」の絶句八首の連作である。いずれも複数の伝本が存し、南畝にとって重要度の高い作品であったと考えられる。 前者については、詳細な注釈を施し、南畝以前に長崎で作られた八景詩や、南畝の他ジャンルの八景作品との比較を行い、南畝の長崎八景詩の独自性と南畝にとっての八景詠の意義について明らかにした。また後者については、詩の使用語句等に、南畝が直接長崎で触れたであろう唐話の影響が見られることを明らかにした。
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