本研究は,行政不服審査手続の法的位相に着目して,行政不服審査手続における手続原則について検討を加えるものである。わが国では,従来,行政不服審査手続は行政訴訟と一体の行政争訟手続であるという観念が強かった。そこで本研究では,事前行政手続の延長としての性格が強いと解されるオーストリア法,ドイツ法を素材とした比較法的検討を交えて検討を進めた。具体的には,研究期間中に改正された行政不服審査法の包括的検討等を前提に,比較法的検討の成果等を活用し,行政不服審査手続の法的位相の検討,それを踏まえて理由の追加・差替え,違法性・不当性判断の基準時といった手続原則についての具体的問題について検討を加えた。
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