わが国では、詐害的(濫用的)会社分割における分割会社の残存債権者の保護類型として、会社法上の直接の履行請求権、倒産法上の否認権および民法上の詐害行為取消権等が併存していると考えられる。各類型の適用は濫用的会社分割の詐害性の内容により判断されるが、濫用的会社分割は狭義の詐害性も偏頗性も含んでいるため、画一的な判断基準は容易に示されない。ドイツ法の分析を参考にすると、個別の事案における保護類型のあてはめは、会社法上の直接の履行請求権、否認権および取消権行使の相手方が、自己の態様(支払不能の恐れ、債権者を加害する認識等)をどのように捉えていたか、実質的な判断をもとに導かれるということが示唆される。
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