本研究は、「ある社会で長い期間くり返されてきた分配方法は、そもそも、どのような(物理的・法的・経済的)要因によって合意されたのか」を考察した。 より具体的に、本研究では、「共有の灌漑用水を分け合い、私有する土地で農作物を育てる」状況に焦点を当てた。そして、このような状況では、限界生産力が逓減するのであれば、私有権を尊重し、私有する土地の面積に応じて分配する灌漑用水を増やすことが、①灌漑用水の利用に関する制約が全くない状況よりも、全ての人々にとって望ましいこと、また、②そのような分配方法はパレート効率的であることを、ローマーらの規範理論を応用することによって明らかにした。
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