研究実績の概要 |
心気症とは、(A) 身体感覚に対するその人の誤った解釈に基づき、自分が重篤な病気にかかる恐怖、または病気にかかっているという信念にとらわれ、(B) その信念が、適切な医学的評価または保証にも関わらず持続し、(C) 日常生活に支障をきたしている状態である。本研究の主な目的は以下の2つである: (1) 心気症に特徴的な恐怖が、どのように高まり、どのように持続してしまうのか、認知行動病理学の観点から検証する。(2) 心気症の傾向が高いほど、ヘルスケアコスト (e.g., 診察費、検査費、薬剤費、サプリメント) が高くなることを検証する。 平成26年度は、前年度に作成したHealth Cognitions Questionnaire日本語版を活用して、心気症の行動面を解明した。 研究3では、心気症者が再保証を求める動機づけは、認知行動理論が提唱するように、脅威を過大評価することか、対人モデル (Lynn et al., 2009) が提唱する、不安定な愛着スタイルを持つことか、を検証した。大学生189名を対象に質問紙調査を実施した。再保証を求める行動を測定するReassurance Questionnaire (Speckens et al., 2000) を従属変数とし、研究2で作成したHCQ-Jと、「つらいときに他者に一緒にいてほしい」と思う程度を測定する、親和動機測定尺度(岡島, 1988)を独立変数とした。重回帰分析の結果、再保証を求める行動を有意に予測したのは、HCQ-Jの下位尺度である、病気になる確率の知覚と、病気になる恐ろしさの知覚のみであり、親和動機測定尺度は再保証を求める行動を有意に予測しなかった。この結果、心気症者が再保証を求める動機づけは、対人モデルよりも、認知行動理論が支持された。
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