本研究の目的は,抑うつの要因とされる2つの認知特性(他者からの評価や優れた達成結果を重視する「抑うつスキーマ」と,出来事の原因・将来の結果・自分自身について悲観的に考えやすい「ネガティブな認知スタイル」)の適応的な側面について検討することであった。大学生を対象とした縦断調査の結果から,抑うつスキーマが良好な人間関係と達成結果を導くことが示された。そして,「認められたい」「成功したい」という強い欲求が抑うつスキーマを高めていることが示された。本研究は,2つの認知特性の内,抑うつスキーマに関しては適応的な働きがあることを示すと共に,それが環境適応上の必要性から形成される可能性を示唆している。
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