研究概要 |
現在までに我々は、「移植後2週までの時点で非培養ADRCsは末梢神経再生を促進する」ことを証明しています (Suganuma S, et al. J Orthop Sci., 2013) 。そこで今回は、末梢神経の欠損長および経過観察期間を延長して実験を行いました。 ラットの坐骨神経13mmの欠損をシリコンチューブで架橋しました。その際、チューブ内に生理食塩水のみを封入した群、アテロコラーゲンのみを封入した群、アテロコラーゲンとADRCsを混入した群の3群を作成し、それぞれ移植後12週の時点でチューブを採取して再生組織を評価しました。しかし、個体間のばらつきが大きく、期待していた結果が得られませんでした。そこで、シリコンチューブを使用した実験モデルには限界があると考え、チューブを国内で発売された生体吸収性の人工神経に変更し、再度実験を行いました。ラットの坐骨神経13mmの欠損に自家神経を移植した群(自家神経群)、人工神経単独で架橋した群(人工神経単独群)、人工神経内にADRCsを封入した移植したハイブリッド人工神経群の3群を作成し、移植後8, 12週の時点で再生組織を評価しました。その結果、ハイブリッド人工神経群は自家神経移植群には及びませんでしたが、人工神経単独群と比較して良好な軸索再生が得られました。また、移植したADRCsは2週の時点同様Schwann細胞への分化は確認されませんでしたが、移植後10週の時点でもわずかに生存が確認され、humoral factorを分泌することにより末梢神経再生を促進していることが示唆されました。 以上の結果より、ハイブリッド人工神経は人工神経単独と比較すると優れてはいますが、現時点で自家神経に及ばず、臨床応用を目指すには細胞のmanipulationやチューブの素材等に関してさらなる改良が必要であると考えられました。
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