研究概要 |
私は2012年に特発性血小板減少性紫斑病(ITP)患者の抗血小板抗体が膜蛋白αIIbβ3の高度に限定された領域を認識すること、及び特定のB細胞クローンが活性化されている可能性があることを示した。本研究ではITPの病態の網羅的解析を目的としており、まずこの抗血小板自己抗体をタンパク質質量解析によってIgG可変領域のペプチド配列を解析した。 クローナリティが高く、その認識領域が高度に限定されているITP患者の血小板関連抗体を材料とし、αIIbβ3強制発現細胞と反応させ、抗αIIbβ3抗体を回収した。これをショットガン解析にかけ、得られたペプチド断片を詳細に解析することで、本患者のIgG軽鎖はλ優位であったが、このλ鎖の可変領域の約半数のペプチド配列を同定し、さらに超可変領域3領域のうち2領域をほぼ同定できた。 またITP患者に認められる抗血小板抗体は血小板機能に影響する可能性があり、さらに、トロンボポエチン受容体作動薬(TPO-RA)は血小板を活性化する可能性がある。しかし、従来、血小板機能検査として用いられてきた光透過法による血小板凝集能検査は、ITPのような血小板減少患者では評価が困難であった。しかし、近年開発されたフローサイトメトリーを使用した血小板凝集能の測定法(De Cuyper IM, et al. Blood 121:e70-80, 2013)及び活性化αIIbβ3を特異的に認識するPAC1抗体および顆粒放出能を反映するCD62P発現を検討することで、血小板減少症患者においても血小板機能の評価を行うことが可能となってきた。これらの検査法を用いてITP7例の血小板機能を解析した結果、多くのITP患者においては正常者と比べ血小板機能が低下していることが判明した。この傾向はTPO-RAの投与患者でも同様であったことから、本薬剤は血小板機能に影響を与えないことが示唆された。
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