研究実績の概要 |
自閉性障害(ASD)および共通する分子基盤を持つ知的障害(ID)患者において、aCHG(array comparative genomic hybridization)解析を行い、候補遺伝子の同定や機能解析を行った。 ① ASD患者におけるcopy number variant(CNV)解析:患者末梢血リンパ球からDNAを抽出しHuman Genome CGH Microarray 4×180K(Agilent technologies)を用いた。ASD例で4/49例(8.1%)で病因と考えられるCNVを検出し、足場蛋白であるSHANK3の欠失、LIN7Bの重複が含まれていた。 ②CNVに局在する遺伝子の変異解析:ASD166例に対し候補遺伝子の変異解析を行った。LIN7Bのシークエンス解析で1例でExon5のドナーサイトの変異(c.602+1G>C)を検出した。Exon5の欠失部位はPDZ domainの約1/3の欠失に相当していた。LIN7はPDZ domainを有し、シナプス機能、細胞接着、細胞極性に関与する。変異解析で得られたc.602+1G>C変異では、PDZ domainの約1/3が欠失し、PDZ domainを介したGRIN2B(glutamate receptor, ionotropic, N-metyl-D-aspatate subunit 2B)の結合が障害されている可能性がある。LIN7はシナプス後膜でGRIN2Bとともに神経伝達物質の補充調節をしていると考えられ、GRIN2Bを介する神経伝達物質の調整障害によりシナプス機能障害からASDを発症していることが推測された。
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