研究課題
若手研究(B)
加齢に伴う生理機能の変化を「老化」と呼ぶが、細胞レベルで見られる「細胞老化」も様々な加齢関連疾患と関連している。細胞老化は外的刺激を受けた際にp53活性化を介して分裂停止に陥った状態で、十分な機能を果たせず疾患進展に寄与する。糖尿病などの代謝異常も加齢に従い罹患率が増加する疾患であり、全身の合併症が進行する。その臓器障害に血管病変が関与することから申請者らは血管内皮細胞の老化に着目したところ、鍵因子であるp53が高血糖状態で活性化していた。そこで「糖負荷により誘導される血管老化が代謝性疾患の進展に関与する」可能性を考え、血管内皮細胞特異的にp53を欠失した老化抑制マウスを作成した。その結果、高血糖で生じる血管内皮機能障害が血管内皮p53抑制で軽減し、この機能と関連する虚血組織の血管新生能も改善していた。また、分子学的解析によりp53はPTENの活性化を介して血管拡張物質NOを産生するeNOSのリン酸化を低下させることが分かった。さらに高カロリー食を与えた肥満モデルでも血管内皮細胞p53活性化が確認され、これにより①NO産生低下を介して骨格筋PGC-1α発現・ミトコンドリア合成を障害すること・②GLUT1発現の低下を介して骨格筋への糖輸送を阻害することを見出した。これらの機能障害がエネルギー燃焼を低下させインスリン抵抗性・肥満の悪化を惹起していることを明らかにした。以上の結果から、血管老化は血管内皮機能障害・代謝性疾患進展に関与しており、この老化制御が新たなメタボリックシンドロームの治療標的になると考えられる。
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Cell Reports
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