研究課題
若手研究(B)
がんの予後を規定するものは転移である。転移において末梢血液中の循環がん細胞circulating tumor cell(CTC)の存在は重要であるが、その機能的役割の解明は十分ではない。近年、がん幹細胞が再発、転移などの起源と考えられ、がん幹細胞とCTCの関係も注目されている。現在までに我々はがん幹細胞マーカーであるCD44に着目し、CD44のバリアントアイソフォーム(CD44v)を介した酸化ストレス回避機構をもとに、マウス乳癌細胞株の肺への転移の分子機構を見出した。さらに複数のヒト肺癌細胞株におけるCD44の発現プロファイルを、CD44 の選択的スプライシングが生じる部位よりN末端、C末端側(exon5、exon16)のプライマーを用いて、RT-PCRにより検討したところ、PC9やHCC827などのヒト肺癌細胞においてCD44vが優位に高発現しており、A549などの細胞ではCD44 standard formの発現が主であった。そしてPC9やHCC827では高濃度の分子標的治療薬での処理後、残存する耐性細胞集団では肺癌幹細胞マーカーであるCD133が高発現し、Sphere形成能やNOGマウスにおける腫瘍生着能も著明に亢進しており、CD44vも同様に高発現していた。これらは非小細胞肺癌における薬剤耐性の肺癌幹細胞におけるCD44vの機能的意義を示唆していると考える。今後は、これまでの我々のCD44v が転移促進を引き起こす知見と分子メカニズムを基盤に、肺がんにおけるCTCの機能的解析及び転移制御を目指した分子標的治療法を開発することを目的とする。
すべて 2013
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Cancer Res
巻: 73(6) 号: 6 ページ: 1855-1866
10.1158/0008-5472.can-12-3609-t