本邦の抄物『漢書抄』に収められている「高后紀」と「文帝紀」について、中国の白話作品『前漢書続集』と比較対照し、語句の削除・変更等を検討した。検討を通じて、「高后紀」と「文帝紀」は節略に過ぎない部分が見える点は否めないが、総じて文意を取れるよう配慮し、『前漢書続集』を抜き書きして成る筆録であると結論づけるに至った。また、「高后紀」と「文帝紀」には、呂后と文帝にまつわる話柄が、ある部分では断続的に、ある部分では連続して大量に、『前漢書続集』より抜き書きしてある。かかる引用は、呂后や文帝にまつわる物語的な要素を、「高后紀」と「文帝紀」に加える意図によると結論づけるに至った。
|